【不治の病】倒れるほどの脱力を伴う、眠り病「ナルコレプシー」が怖すぎる…

健康

いつでもどこでも眠気・脱力に襲われる「眠り病」

こちらの動画をご覧いただこう。

動画の女性はナルコレプシーという病気を発症している。この病気は睡眠に関するもので、日本では「眠り病」や「過眠症」と呼ばれている。言葉から想像するとたいしたものには思えないかもしれないが、実際はとても大変な病気なのだ。

症状:急激な眠さ、倒れるほどの脱力…

ギリシャ語で「眠り」を意味する”narco”(ナルコ)と「発作」を意味する”lepsy”(レプシー)が由来であるナルコレプシーは、睡眠に関する病気である。

この病気の主な症状は、突如襲われる過度の眠気と全身の筋肉の脱力だ。

眠気くらい誰にでもあるでしょ、と思う人もいるだろうが、「過度」という言葉はそんなにやさしいものではない。この過度の眠気に襲われると、寝ないよう抵抗しても眠りに落ちてしまい、それが断続的に何度も繰り返されるのだ。

さらに、普通の人では眠気を感じない場面、例えば重要な試験や会議の場でも強烈な眠気に襲われることがある。このように重度な症状がでると、仕事を続けるにも支障をきたしてしまう。

他にもナルコレプシーを発症すると、睡眠に入る時に幻覚をみたり、金縛りにあったりする。だが最も恐ろしいのは、ナルコレプシーは高い確率で、ある深刻な症状を誘発することだ。その症状とは、筋肉の緊張がほどけてしまう、情動脱力発作「カタプレキシー」というものである。

カタプレキシーは喜怒哀楽や恐れ、羞恥など感情が高まった際に、身体の筋肉の緊張が抜けてしまうものだ。軽度の場合、軽い脱力感を感じる程度だが、重度の場合、全身の力が抜けて倒れてしまうこともある。

通常は数分程度で治るが、「発作を抑えなければ」と思い緊張することで、さらなる脱力を引き起こしてしまい何十分も続くという悪循環に陥ることもある。

感情の揺らぎによって引き起こされるので、日中どこでも起きる場合がある。道端で急に発作が起こり倒れてしまう可能性もあり、とても危険だ。

このようにさまざまな問題が発症する複合的な睡眠障害がナルコレプシーだ。ではこの病気は、どうして起こるのか、またどのようにすれば治るのだろうか。

原因:オレキシンという物質が関係しているそうだが…

ナルコレプシーは、オレキシンという物質の欠乏が原因ではないかと考えられている。

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オレキシンは、自律神経を調節する視床下部という部位を刺激し、人の覚醒を促すものだ。オレキシンが欠乏している場合、自律神経がうまく作用せず、覚醒と睡眠の調節ができない。つまり、目が覚めている状態から、急にスイッチが切り替わり睡眠状態になったり、逆に睡眠状態であるべき時にうまくスイッチが切り替わらなかったりするということだ。

実験によって、オレキシンが欠乏しているマウスはナルコレプシーを発症し、ナルコレプシーを発症したマウスにオレキシンを投与すると、症状が改善されることが明らかにされている。また、ナルコレプシー患者の約90%は、オレキシンが欠乏しているという事実もあり、ナルコレプシーとオレキシンが関係していることは間違いないだろう。

だが最も重要な問題は、「なぜオレキシンが欠乏するのか」ということだが、この問題は未だに解明されていない。この理由が明らかになっていないので、ナルコレプシーの根本的な治療法は発見されておらず、たくさんの人々がナルコレプシーに苦しんでいる。

ちなみに、ナルコレプシーは2000人に1人の割合で発症するのだが、なぜか日本では600人に1人の高い割合で発症している。理由は明らかになっていないが、人種の違いが影響するのかもしれない。

対策:薬や周囲のサポートが必要

ナルコレプシーは根本的な治療法が見つかっていないため、現れた症状ごとに対策をとるしかない。

軽度の症状であれば、夜間の睡眠を十分にとることが大切とされている。また、計画的に昼寝をとることも効果的だ。軽度の場合、睡眠を十分にとることで、覚醒と睡眠のスイッチがうまく切り替わり、ナルコレプシーの症状が落ち着くそうだ。

睡眠だけで改善されない場合は、薬物の処方が必要となる。自律機能を司る中枢神経を刺激する薬を使用することで、日中の眠気を抑制することができる。だが、中枢神経刺激薬のリタリンやモディオダール、ベタナミンは副作用や依存性が強いものが多く、注意が必要とされている。

また、ナルコレプシーの対策には周囲の人々の理解が必要不可欠である。

試験や会議の途中でも眠気に襲われるナルコレプシーは周囲の理解がなければ、「サボっているだけだ」「気が抜けているだけだ」などと思われがちである。このような環境では、病気に苦しむ患者にストレスがたまってしまう。ナルコレプシー患者はストレス環境下で症状が深刻化したり、カタプレキシーを引き起こしたりする可能性があるので、周りのサポートがとても重要になる。

周囲の人が病気の大変さを知り、気遣い・サポートしてあげることが重要だ。

補助犬とともに過ごす

近年、ナルコレプシーの対策として、補助犬とともに暮らすという選択肢ができた。

この女性は、イギリス人のEmily Rounds(エミリー・ラウンズ)さん。彼女はナルコレプシーに苦しんでいる。彼女の病状は深刻なもので、日中道端でも眠気に襲われ、カタプレキシーの発作もたびたび起こってしまう。

だが、エミリーさんは理解のある旦那さんともう一人のパートナーに支えられながら、幸せに暮らしている。そのもう一人のパートナーというのが、補助犬のパピーだ。

Poppy(パピー)は、元は捨て犬だった。保護された後、トレーニングを受けながらエミリーさんとともに暮らすことで、立派な補助犬となった。

エミリーさんが急に眠ってしまったときには起こし、カタプレキシーの発作が起こったときには周知してくれる。パピーのおかげで、エミリーさんは病気を患いながらも、安全に暮らすことができている。

周りの人の理解が重要

ナルコレプシーは、未だに治療法が発見されておらず、苦しんでいる人がたくさんいる。また、周囲の人の病気に対する理解が進んでおらず、社会的に苦しむ人も多い。

だからこそ、われわれはこの病気について、知っておくべきなのだろう。病気について、少しでも多くの理解を得られれば、ナルコレプシーの患者は病気に苦しみながらも、安心して暮らすことができるようになるのではないだろうか。

参照元:WikipediaYouTube、Twitter[1][2][3][4]

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Haru

抽象性大好き男。できないことにしか挑戦しない、当たって砕けるタイプ。詰めが甘く成功を取りこぼすこと多々あり。自己紹介の始まりは基本「男なのに嵐好き」

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