妊娠20周目、生まれてくる我が子に異常を発見
2015年10月に結婚した21才のシャーロット(Charlotte Szakacs)と28才のアティラ(Attila)。2人はこの冬、新たな家族の一員を迎えるはずだった。結婚当初から2人とも妊娠を強く熱望していたがなかなか子宝に恵まれず、そして1年以上経ったのちの2016年4月28日に待望の妊娠が判明したのである。シャーロット21才の誕生日の前日のことだった。
36 weeks and 5 days, feeling massive cant wait to meet my little princess soon! 💖
そしてシャーロットが妊娠20周目にさしかかった2016年9月、異変に初めて気付いたのだ。産婦人科で受けたスキャンにより生まれてくる我が子は染色体が衰弱しているという異常がみつかったのである。医師は羊水検査を行い染色体が不均衡であることを告げ、その後シャーロットは妊娠37周目まで2週間おきにスキャンを受け続けたのだ。
願いは叶わず4週間後に他界した小さなエヴリン
After 3 long days of waiting to hold our baby girl, here is it! The most precious moment in the world 👶🏻😍💖
2016年12月13日リード総合小児科にて2人の愛娘エヴリン(Evlyn)が誕生した。体重は約2500gという小さな赤ちゃんだった。エヴリンの脳はまだ未発達の状態で、また鼻と肺の気道が狭く大動脈も狭いままこの世に生を受けたのだ。帝王切開で生まれてすぐにエヴリンは人工呼吸器につながれた。シャーロットがエブリンと対面できたのはそれから7時間後、そして自分の腕で抱くことができたのは3日後のことだった。
shes so beautiful I miss her so much already, don't know what I'm going to do without her 💔👼🏻
シャーロットとアティラは奇跡が起きることを信じて奮闘した。しかし彼らの願いは叶うことはなかった。エヴリンの出生から4週間後の1月10日、マーティンハウス病院で両親の腕のなかでまだ小さなエヴリンは息を引き取ったのである。
エヴリンの死後、病院で12日間3人で過ごした家族
we love you so much evlyn, fly high with the angels 👼🏻💖
エヴリンの死後、シャーロットとアティラは病院で用意されていたカドルコット(Cuddle Cot)にエヴリンを寝かせた。カドルコットとは病院にある医療設備のひとつで、赤ちゃんが亡くなった際にすぐに死体安置所に連れていかず最後の時期を家族で一緒に過ごせるように用意されたものだ。赤ちゃんが通常使うようなバシネットやベッドを想像してもらえればわかりやすいと思うが、そのベッドは冷たく冷蔵庫代わりとなり遺体を低温で保存できるようになっている。
このカドルコットを使い、3人は病院で12日間をともに過ごしたのである。
エブリンと過ごす『家族の時間』が意味のあるもの
1月26日にエヴリンの葬式がとりおこなわれることになった。その4日前にエヴリンを自宅へ連れて帰ることになったのだが、なんとその前にエブリンを連れて散歩に行くことが許可されたのである。死んだ赤ちゃんを外に連れ出すなんていう話を聞いたことがあるだろうか。すべての人にとってこの選択がベストなものだとは限らないがシャーロットとアティラにとって『家族の時間』を持つことはとても意味があるものだったのだろう。彼女はこう話す。
「エヴリンとの時間を持てたことはすごく意味があることだったの。赤ちゃんが生まれるとこんなこともやりたいあんなこともやりたいっていう想像がたくさんあると思うけど、たとえばベビーカーで外に連れて出たりすることができたっていうだけで私の感情面が本当に助けられたわ。本当のところエヴリンを自宅につれて帰っていいものかすごく悩んだの、自分のやっていることって本当に正しいのかってね。でも実際に連れて帰ることができて本当によかったと思ってる。それは私たち夫婦にとってだけではなく、エヴリンにとっても自宅に帰ることができたんだから。」
「赤ちゃんとの別れが受け入れられない!」そんな人のための向き合い方
Evlyn Szakacs 💖🎀👶🏻
She's my world already I love her so so so much!! Managed to get a photo of her peeping her little eye open!!
She's so so so cute 😍😍😍😍
気道の狭いエヴリンは自分で呼吸することはできないため、生きるために必要な心臓の手術をすることは不可能だった。もし死を乗り越えていてもエブリンには聴覚、視覚、そして会話をすることにも障害が残り、精神的にも肉体的にも様々な困難に立ち向かわなければいけなかっただろう。
死産および新生児死の慈善団体である『Sands』の最高責任者であるクレア ハーマー(Clea Harmer)博士はこう言う。
「エヴリンの死後、カドルコットを使うことによって両親は赤ちゃんとの時間をより長く過ごすことができた。これまでお会いした両親のなかには最後の時期を自宅や病院で亡くなってしまった赤ちゃんと過ごすことができたことは悲しみを乗り越えるためになくてはならなかったものだと話す人が多い。もし赤ちゃんの死に向き合えずに悲しみに暮れている人がいたら是非とも我々に連絡してほしい。」
I never take precious moments like this for granted, miss having cuddles so much, breaks my heart when I can't have them with her 💔
10ヶ月間お腹のなかで守り続けてきた赤ちゃんとやっと対面できると思っていたのに、出産時や産後に命を失ってしまうことははかりしれない悲しみがあるに違いない。そんな我が子の死は受け入れがたく、離れることもできないだろう。この夫婦のように自分たちの赤ちゃんとほんの少しでも『家族の時間』を持つことができるのであればそう願う夫婦は多いのではないだろうか。ここ日本でこのような事例はまだないかもしれないが今後可能になれば残された親にとっては何よりの心の治療になると私は思うのだ。