社会的弱者に対する公務員の対応は?
社会的弱者にとって、市役所や自治体は最後のセーフティネット。行政は市民に平等に手を差し伸べる立場であるべきだろう。
しかし実際は、雑な対応や、横暴な振る舞いをする職員も少なくない。これは「お役所仕事」と例えられるほど、日本にも蔓延している問題だが、こうした問題は、役所のトップの耳にはなかなか届かない。
今回紹介するメキシコ・チワワ州の行政においても、かねてからホームレスや障害者など恵まれない市民からの職員に対する苦情が相次いでいた。
そこで市長が、その実態を知ろうと自らホームレスに変装し、市役所職員の対応を抜き打ちチェックしたのである。
この試みをおこなったのは、メキシコ・チワワ州クアウテモック市の市長、カルロス・テナ氏。
物乞いに変装して市民と交流を深め、そのニーズを聞き一国を治めたという7世紀のペルシャ王の伝説から着想を得た。
テナ市長は、きちんと市民が尊重されているかを知るために、障害をもった貧しい人に変装したのだ。
上の動画に写っている、車椅子に乗った貧しい男性がテナ氏ご本人。氏はこの姿で市役所や福祉施設に足を運び、「食べ物をくれませんか」と願い出てみたという。
しかし、実際の職員の対応はあまりにもひどいものだった。例えば、障害者専用のエレベーターについている警備員が非常に失礼な態度でドアをあけたり、介助が必要にも関わらず無視する者もいたという。唯一親切な対応をしたのは、食べ物を求められゼリーを提供した女性職員のみだったそう。
そして最後に、氏が車椅子から立ち上がり、帽子とサングラスを取った姿を見せたところ、職員は一斉に凍りついたという。
これを受け市長は、「市民の日常生活を知ることができ、そして公務員側の無関心と怠慢が裏付けられた。」と会見で述べた。
早速、少なくとも3人の解雇が決定しているという。上で述べた問題の警備員については、民間の警備会社所属のため、解雇の権限を持っていないとのことだが、残念な結果だったという旨のコメントを残した。
テナ氏は今回の試みによって、より市民のニーズを意識するようになったと明かしている。