20年の時を超え帰ってきた愛娘
今から二十年前の1999年、ベラルーシのミンスク発、アシポヴィーチ行の電車内にて、当時4歳だったユリア・モイセエンコちゃんが失踪した。
いなくなったのは、一緒に乗っていた父親のビクトルさんがうたた寝をした隙のことだったという。夫妻は警察に被害届をだし、懸命な捜索を続けていたというが、発見は絶望視されていた。
だが失踪から20年がたった今年8月、なんと夫妻の元に娘が帰ってきたのである。
もう見つからないと見られていたユリアさんは、現在24歳となり、ロシア・リャザンに住んでいた。
そんな中、ユリアさんにイリヤ・クリュコフ(31)さんという恋人ができた。彼はユリアさんの過去を聞いたとき、「彼女のために両親を探してあげよう」と決心したのだそう。
こうして彼女の言葉の中にあった「電車」「女の子」「失踪」という言葉からネットで検索したところ、捜索願の情報を発見。そして、失踪した女の子の顔写真が、ユリアさんにとてもよく似ていたのだ。
やがて顔写真の交換や、双方のDNA検査などを経て、ついに家族だと証明された。ユリアさんは20年ぶりに、両親の元に帰ったのである。
その時の気持ちについてユリアさんは、「DNAテストによって家族だと証明されましたが、それ以前にお互いの写真を見て、家族だと確信していました。」と語る。ベラルーシで再会を果たした時、歩けないほどに一気に泣き崩れ、ずっとハグを交わしていたという。
ユリアさんによると、連れ去ったのは見知らぬ男女2名。電車を乗り換えロシアで降りたあと、犯人らとともに廃屋とみられる家の中に隠れていた記憶があるのだという。
それ以降はほとんど覚えていないというが、しばらくしてロシアの警察官に保護されたそう。しかし、今では「ベラルーシ訛りの言葉をしゃべっているにも関わらず、なぜ当時警察はロシア国内でしか捜査しなかったのかわからない」と疑っているそうだ。
その後、あるロシア人夫妻の養子となり育ったというが、それ以降も実の両親を探してもらえることはなかった。動画中に出てくる白髪の男性は、里親となったユリアさんの義理の父である。
とはいえ、ユリアさんは、恋人の協力により、実の両親に再会できたことを心から喜んでいた。
インタビューの中で、母親のリュドミラさんは「20年間・・・まるで人生に穴が空いたかのようでした。ですが、希望を捨てずに暮らし、最後には再会が果たせました。」と涙ながらに語った。
現在、ユリアさんもまた母親となり、一人娘がいる。20年間の失われた時間を、2世代でゆっくり取り戻してもらいたいものだ。