クスリをキメたザリガニが度胸をつける!?
うつ病やパニック障害の治療薬として、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」という薬が処方される。こうした抗うつ剤は、アメリカでは2014年でおよそ3000万人が使用しているといわれている。
このように広く使われているSSRIだが、思わぬ方向で悪影響をあたえている可能性があるらしい。
アメリカの論文サイト「Ecosphere」に投稿された研究によると、SSRIを服用した人間の尿が河川に流れ込み、その環境で育ったザリガニが大胆で冒険的になっていることが明らかになった。
研究をしたのは、フロリダ州立大学で土壌や水質を調べているアレクサンダー・A・ライジンガー氏の調査チーム。
彼らは環境汚染物質の一つに医薬品があることを考えているが、生態系に与える影響についてはあまり知られていないとしている。ほとんどの医薬品は生態系に致死的な影響を与えるが、今回、非致死的なレベルでも長期間にわたりさらされると、生態系を破壊すると仮定した。
実験は2016年に人工河川を作り、14日間にわたって行われた。ザリガニが放流されると、SSRIを薄めた水を加えた河川と、そうでないものの2つが作られた。
その結果、SSRIが入った水の中にいたザリガニはより活発になり、餌探しに積極的になり、外敵から身を隠す動作が少なくなっていたのである。これにより、活発なザリガニは捕食者により食べられやすくなってしまっていたのだ。
幸福感を高める”セロトニン”の量を増やすSSRIの影響とみられている。同様の分泌物質は、ザリガニだけでなく多くの動物に存在している。
この結果は、抗うつ剤を服用する人間の尿が河川に流れることは、自然に大きく影響を与えることを示唆している。
アメリカの汚水処理施設は薬剤成分を除去する施設を備えておらず、汚染された水が自然に流れこむ可能性が高いという。それはごく少量とはいえ、小さな水生生物の神経に影響を与えるには十分の量なのだ。
薬剤成分は生き物をすぐさま死なせるわけではないが、その影響は大きい。ネットではこのニュースに対し、「遠回りにこんな影響があるのか」「驚いた」との声が多く挙がっていた。