骨董品店の階段を下ると裸のスタローンがいた。苦悶の表情を浮かべるそのゴム人形が語る数奇な人生

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シルベスター・スタローンを模した奇妙な人形

先月末、オーストラリアの骨董品店で発見されたとあるゴム人形がTwitterに投稿され話題である。

この人形の発見者は「なぜこんな奇妙な物がこんなところに?」と不思議に思い、その写真をネットに投稿した。
すると瞬く間にその来歴が判明したようだ。

8月下旬、オーストラリア東南部ニューサウスウェールズ州カトゥーンバで陶芸家のベー・ベリンガムさんは夫と骨董品を探していた。
彼女は骨董品店に入ると、その地下室でこの”奇妙な”裸のスタローンのゴム人形を発見した。ちなみに売値は約4,000 ドル(約56万円)。高い!

「夫とカトゥーンバに数泊していたの」「ここは風変わりな村で、カトゥーンバ・ヴィンテージ・エンポリアムもすごく風変わりな品物を扱っている骨董品店だったわ。そこでこの奇妙な叫び声を上げている人形の写真を撮ったの」

そして、

「うん、これは今日の最も奇妙な発見だ」

と思ったという。

彼女はこの人形を撮影しInstagramに投稿したが、この人形の由来に見当もつかなかったためすぐに削除した。
しかし、この写真はすぐに Twitter上で拡散され、1万を超える「いいね」が付けられた。そしてその人形の由来はスタローンファンによってすぐさま特定されたという。

スタローン人形の数奇な人生

スタローン主演、サンドラ・ブロック、ウェズリー・スナイプスなどが出演した 1993 年のアクション映画「デモリション・マン」。映画のストーリーはこうだ。

1996年、ロサンゼルス市警の刑事スパルタン(スタローン)はその捜査姿勢から“デモリションマン(壊し屋)”の異名をもつ。彼は人質を取ったバスジャック犯フェニックスを逮捕するものの、罠にはまり人質は全員死亡。スパルタンは作戦失敗の責任と罪を問われて被告となり、フェニックスと同じく冷凍刑に処され冷凍睡眠で永い眠りに付いた。それから36年後の2032年、仮釈放審査のために一時解凍されたフェニックスがなんと脱獄。20世紀最大の凶悪犯フェニックスになす術が無い警察は、“デモリションマン”ことスパルタンを解凍してフェニックス逮捕を命じる。そして・・。

90年代ハリウッドアクション映画の王道、メッチャ面白そうなストーリーである。

察しの良い方ならすでにピーンときたと思う。そう、この人形は映画の中で”冷凍刑”に処されたスタローンを模したもの。実際に映画で使われた小道具であれば大変貴重なものだ。マニア垂涎もので50万という金額はお値打ちにも思える。

しかし、話はさらに続く。
1991年にニューヨークに開店したハリウッド映画をテーマとしたレストランチェーン『プラネット・ハリウッド』。このレストランは、シルベスター・スタローン、ブルース・ウィリス、デミ・ムーア、アーノルド・シュワルツェネッガーが出資を行い、華々しく世界的にチェーン展開を行った。日本でも千葉県浦安市の東京ディズニーリゾート内イクスピアリに2001年に開業したのでご存じの方も多いはず。

ツイッターユーザーのアダム・ハウズ氏の見解によると、ゴム人形はこの『プラネット・ハリウッド』のレストラン・フランチャイズに販売されたいくつかの店内装飾品の1つであり、プラスチックの「氷」で覆われ天井に吊るされていたものに違いないとのことだ。

当レストランはオーストラリアにも1990年代に2店舗が開店した。しかし健闘むなしく2002年に両店とも閉鎖されたという。
ちなみに日本店も2009年に残念ながら閉店されている。

「このゴム人形の起源はシドニーの”プラネット・ハリウッド”であると考えて間違いない」

とアダム・ハウズ氏は取材に応えて語っている。

栄枯盛衰、諸行無常。しかし、当の本人は

90年代のハリウッド映画から華々しく生まれ、全世界にフランチャイズ展開されたレストランの天井で皆を楽しませたこのゴム人形。しかし時は流れ、レストランは閉店の憂き目に。華やかだった店は解体され、不要備品として倉庫に保管、そして骨董品として買い取られる・・。色々あった30年の時を経て現在は骨董品店の地下で余生を過ごしてる、と考えるとその表情には諸行無常を感じてしまう。

しかし、その一方当の本人スタローンは、3人目の妻と離婚騒動の渦中ながら、アマゾン・プライム・ビデオ『サマリタン』(これもメッチャ面白そう)に主演、76歳にしてスーパーヒーローアクションに挑戦、その上映会にもサプライズ登場するなど話題を振りまいている。
年老いてなお活動的、娘の美人3姉妹に囲まれたところなどこれぞバリバリ現役のハリウッドスターといったところだ。

このゴム人形もまだまだ活躍の場はあるに違いない。時と場所を得て骨董品屋の地下室から復活、不死鳥のごとく再び華々しい舞台で活躍することを願ってやまない。

NewYorkPostTwitterWikipedia(1)Wikipedia(2)

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ひろしげ

海外渡航経験はハワイ、イギリス、ニュージーランド。大陸に憧れと恐れを抱く典型的島国の人です。趣味は大仏巡り。牛久大仏を擁する茨城県が魅力度ランキング最下位というのは納得できない。

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