インドの有名モデルはスラム出身だった
こちらは、今、インドで最も人気のあるティーンモデルのひとり、マリーシャ・カルワさん(15)である。
15歳ながらにして、すでに『ヴォーグ』や『コスモポリタン』などといった国際的なファッション誌の表紙を飾り、高級スキンケアブランドの顔となったり、インスタグラムには37万人以上のフォロワーを抱えるなど、その活躍ぶりはとどまることを知らない。
しかし、彼女の人生は順風満帆だったわけではない。実は彼女、ムンバイのなかでも特に治安の悪いとされるスラム街ダラヴィで育ったというのである。
スラム街に住む少女が、一体なぜモデルとなり、そして有名になったのか、それはある出会いがきっかけだった。
米俳優が投稿した動画がきっかけで人生激変
今から約3年前、海外ドラマ『グレイズ・アナトミー』で知られる米俳優ロバート・ホフマンさんは、ミュージックビデオの撮影のためにムンバイを訪れていたという。そして、そこで出会った笑顔が印象的な少女マリーシャさんに話しかけ、彼女の動画をソーシャルメディアに投稿した。
すると、その動画はまたたく間に拡散され、多くの人の目にとまった。そして、スラム街に住むマリーシャさんにオーディションのチャンスが舞い込むようになったというのだ。
マリーシャさんは当時のことをこう話す。
少し前なら、私はポスターにも新聞にもテレビにも出なかったのに、今は世界中に存在しています。誰もが私のことを知ってくれセルフィーを求めてきます。そんな自分を誇りに思います。5歳のころからずっとモデルになりたいと夢見ていたのですから、今とても幸せです。いつの日か、スーパーモデルになりたいです。
そんなマリーシャさんが、モデルとしてお金を稼いで最初にしたことは、家族をスラム街から抜け出させることだった。以前は電気のない生活を強いられ、水を遠くまで汲みに行かなければならなかったという。自治体によって小屋を取り壊されることもあったというが、今、家族はきちんとしたワンルームマンションに住み、そこには電気も通り天井にはファンもついているという。
今年に入っても、マリーシャさんは高級美容ブランド『フォレスト・エッセンシャルズ』の新キャンペーン「ユヴァティ・コレクション」の顔となり、彼女のサクセスストーリーが終わる気配はない。むしろ、オンラインでもオフラインでも注目を浴び続ける15歳の彼女の人気は高まるばかりで、「スラム街のプリンセス」と呼ばれるマリーシャさんは、インドのスラムで大きな夢を抱いている何百万人ものティーンエイジャーの希望の象徴となっている。
彼女の人生を変えた偶然の出会いは、同じくスラムから人気モデルになったフィリピンのリタ・ガビオラに匹敵するが、たった1本の動画が誰かの人生を良くも悪くも変えてしまうのは、現代ならではの出来事なのかもしれないですね。