化学療法の副作用による脱毛。そのストレスからの解放
ワシントン州ボセルにある、ヘナ・ボディーアート・ショップ、サラヘナ(Sarahenna)を運営しているサラ・ウォルターズさん(Sarah Walters)。彼女は癌治療を行う患者さんのために、あることを行っている。
それが、ヘナによるボディー・ペイント・アート、ヘナクラウン(ヘナで描く王冠)だ。
ヘナは、乾燥した地方に育つミソハギ科の常緑木。ヘンナと呼ばれることもある。その葉を乾燥させ、粉にしたものを水などで溶いて、染料として使用する。かのクレオパトラも、ヘナで爪を染めてマネキュアのように使用していたという記録も残っている。
サラさんは、そのヘナを使って、髪が抜け落ちてしまった頭皮に、美しい王冠(クラウン)をペイントするのである。
そもそもサラさんが、癌患者へのヘナクラウンのペイントをはじめたのは、友人の死がキッカケだったという。その友人は癌の宣告を受けてから、治療のかいもなく5ヵ月後に亡くなってしまった。
治療中の友人の姿を見ていたサラさんは、癌と戦う他の患者さんの助けになれることはないかと、ヘナクラウンのペイントをはじめたそうだ。
ヘナによる肌への染色は、基本的に半永久的に続く。そう聞くとタトゥーと同じではないか?と思うかも知れない。しかし通常のタトゥーが針を使い、墨を皮膚の奥深くまで浸透させるのと違い、ヘナによる染色は皮膚の表面にペイントするだけだ。
では、なぜ染色が半永久的に続くのかというと、ヘナの持つローソンという色素が皮膚内のタンパク質と絡み合い、そこにとどまるからだ。とは言っても、奥深くまで色素が入り込むことはなく、表層でとどまる。
つまり半永久的と言っても、一定期間たてば、古い角質などと一緒に、どんどんヘナの色素も消えていく。
※ただし、ヘナによる肌への染色は、消したくてもすぐに消せるものではない。しっかりと検討したうえで行ってほしい。
癌の化学療法により、髪の毛が抜け落ちてしまった患者さん、特に女性にとっては、治療中の大きなストレスになりかねない。そのストレスを少しでも緩和できるように、今日もサラさんは患者さんの頭に美しいヘナクラウンを描き続ける。
生きるための治療ではあるが、患者さんにとっては辛く厳しいものになることも多い。それでもサラさんのヘナクラウンが、患者さんの心を少しでも癒してくれることを願わずにはいられないのである。
参照元:distractify、instagram