核が落ちたときの被害が一目でわかるサイトが登場
北朝鮮の度重なる核実験で、世界の緊張は高まっている。私たちが住む日本だけではなく、ICBM(大陸間弾道ミサイル)により、アメリカなどの周辺各国も核の脅威にさらされている。
こういった大量破壊兵器が実際にどのような威力を持つのか、みなさんはすぐに想像つくだろうか。ニュースではほとんど報じられないため、わからない人の方が多いのではないかと思う。
今回紹介する、「ニュークマップ」は、大量破壊兵器が地上に落ちたときの威力を地図上でシミュレーションできるサイトだ。
英語でのみ配信されているので、当記事では和訳しながら説明しようと思う。
左側にはグーグルマップ、右側はシミュレーションの設定画面が映っている。
右側のプルダウンメニューから、爆弾の種類も選択でき、太平洋戦争で広島に落とされた原子爆弾から、現在北朝鮮が開発中の核兵器の威力まで見ることができる。
サイトを使いたい方のために、設定画面のボタンを日本語訳してみた。赤い「Detonate」のボタンを押すと、設定が反映される。
ではここで、今私たちが最も恐れている北朝鮮のシミュレーションをしてみよう。
北朝鮮が2017年に開発中のミサイルが、東京都庁に落ちた場合のシミュレーションがコチラだ。爆弾量150トン、地上で爆発、風向きを北に設定した。
オレンジと黄色の範囲は、放射性物質が降る範囲である。風向きが北の場合、栃木県にまで放射性物質が降下する可能性がある事がわかる。
推定死者数と推定負傷者数も表示されているが、その下には24時間経過した時点での死傷者数が表示されている。なお、死傷者の数を正確に特定するのは難しく、あくまで推測される範囲だ。
核兵器を冷静に見つめるということ
このサイトは、アメリカ・スティーブンス工科大学で核兵器について研究している、アレックス・ウェラーシュタイン助教授が作成したものだ。
英ガーディアン誌などでも解説を行っている専門家で、今回紹介したニュークマップのほかに、ミサイルの飛距離をシミュレートできるミサイルマップというサイトも運営している。
ウェラーシュタイン助教授はこのサイトを作成した意図について、FAQでこのように語っている。
私たちの世界は核の危機に晒されていますが、核兵器が実際にどのような威力を持つのかはあまり知られていません。世界中全てを破壊するという人もいれば、従来の爆弾と変わらないと捉えている人もいます。
「ニュークマップ」は、皆さんが核兵器を視覚的に理解してもらうことを目的に作成しました。皆さんが慣れ親しんでいる場所や、核兵器によってどのような被害をもたらすかを理解できるように作っています。
このサイトから政治的意図を見出す方もいるかと思いますが、「ニュークマップ」には一切政治的なメッセージは込めていません。
ニュークマップにより、通勤で通る道、行きつけのお店、家族や友達が住んでいるところに爆心地が表示されることで、「核兵器は日常を破壊するんだな」ということを筆者は思い知らされた。
太平洋戦争中、広島や長崎にも私たちと変わらない日常を過ごす人々がいた。そして私たちも今、同じ脅威にさらされていることが感じられる。核兵器により苦しむのは、いつの時代・どこの国でも一般市民なのだ。
だというのに、ここまでわかりやすく核の恐ろしさを教えてくれるメディアは少ない。それがなぜなのかは様々な理由があるだろうが、核の危機に晒されている今、この事実は無視できないだろう。
マップからは恐ろしさを感じるものの、冷静に核の実態を見つめられる数少ないサイトではないだろうか。
参照元:NUKEMAP、