「自然災害が動物にどんな影響を与えるのか?」
このテーマを研究している学者コリン・ドニヒューさんたちは、先日、学術誌「ネイチャー」で、ある研究結果を公表した。
生き残りやすいトカゲの特徴を解明
コリンさんたちの研究チームは、絶滅の恐れのあるイグアナの調査をするため、タークス・カイコス諸島を訪れていた。
あるとき、彼らは一度その地域を離れた。その4日後、ハリケーン・イルマ、次いでハリケーン・マリアが現地を襲った。
ハリケーンによって荒らされた自然。そのとき、コリンさんたちは、災害を受けた自然にはどのような影響があるのかという調査に乗り出した。
トカゲの研究もしていた研究チームは、「トカゲが何かに掴まる力とハリケーンから生き残ることには関係があるだろう」という仮説を立てた。
つまり、木の枝などに掴まる力が強い個体ほど、ハリケーンの強風にも耐えることができるだろう、と考えたわけだ。
そして6週間後、ハリケーンが過ぎ去った後にトカゲを捕獲し、体を調べたところ…体自体のサイズが小さくなり、前肢は長く、後肢は短い個体が多かった。また足の裏にある”パッド”のサイズが大きいという特徴も持っていた。
送風機を使った再現実験
この身体的な特徴について研究するために、彼らは送風機を利用して、ハリケーン時の様子を再現した実験を行った。
その様子がこちらだ。
かなりシュールな動画だ…いやそうではない。
この動画をよく見ると、後肢が先に棒から離れていることがわかる。もっと後肢が長くなれば掴まる力も強くなりそうなものだが、コリンさんたちは「体が大きくなることによってより大きな抵抗を受けてしまうことを避けるため(に後肢は短いの)ではないか」と推察している。
この研究は、急激な環境変化による淘汰を明らかにする、初めての証拠だと彼らは言う。
生物の進化にはいまだ解明されていない部分も多い。今回の研究が生命の謎の解明に寄与するのかもしれない。